現役早大生の釣りアマ日誌 ~八景島でシロギス編〜

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早稲田大学の学生はみんな華やかなキャンパスライフを送っている、そんなイメージありますか? 全くとんでもない! 東西線は毎朝満員。キャンパスは人であふれ、どこに行っても人、人、人。人の多さに耐えるという試練の日々をエナドリと油そばでなんとかやり過ごしている、これが我々の現実です。休みたい….おいしいご飯食べたり、自然感じたりできないかな? そうだ! 釣りに行こう! 圧倒的閃きを得た私は悲痛な体からの要請に答えるべく、釣りに精通している父親をひっぱり、釣りに向かうことにしたのです。そういえば、自己紹介がまだでしたね。私みなはとと申します。この記事では全くのアマチュアである私がシロギス釣りに挑む様子をお話しさせていただきます。

9月下旬、釣りと言えば早朝に起床ということで、2時半に起床です。というかまだ夜! 完全にふざけています。2時半に起床して何かに取り組むなど意識高い系のインフルエンサーのルーティーン動画でしか見たことがありません。しかしよく考えてみれば、漁師の方々が普段この時間から仕事に行かれることで、私達の食卓においしいお魚が並んでいるのです。まったく……感謝しかありません。ただそれとこれとは話が別です。寝かせろ。眠い目を擦りながら1人でふざけていると、お父上から出発の合図が。目指すは金沢八景、つまり東京湾です。車に釣り道具やおやつを積み込んで、いざ出発です。

強力な酔い止めの副作用か、はたまた寝不足のせいかは定かではありませんが、行きの車内ではうとうと。次に私が意識を取り戻したのは港に到着してからでした。今回の舞台となるのは金沢漁港の「進丸」という船宿。よろしくお願いします。挨拶と受付をすませ、しばらく海を眺めていました。ちゃぷちゃぷ聞こえる海水の音を聞きながら、水平線を目で追うのはなかなか風情なものです。東京ではまだあんなに暑かったはずなのに、微かに船の排気臭を含んだ潮風は、長袖のシャツを着ていても私の体温をじわじわと奪っていきます。恐るべし八景島。防寒も兼ねてフィッシングウェアに着替え、準備なども済ませるともう5時半。辺りもだいぶ明るくなってきており、釣りへの期待値は最高潮になっていました。

(キャプション)港の様子はこちら。少し曇っています。

船の出発までまだ少し時間があったようなので、ここでお父上からレクチャーを受けました。今回使う仕掛けはこれ。

これを釣り竿から伸びている糸に取り付け、釣りをしていきます。それを含めた全体図がこちら。

私はまだ動いていない船の上で練習を始めます。まずは重りだけをつけてファーストエントリー。た、たのしい….。今後はこのプロセスで釣りをしていくそうです。

まだ釣りともいえない遊戯で完全にハイになっている私だったのですが、ここで釣り餌とご対面。流石にドン引きです。何を隠そう今回の釣りでは青イソメという虫のような生き物を使用するのですが、この見た目が尋常じゃないほどグロいのです。ここでは画像をあえて出しませんが、ムカデとミミズを出して二で割って柔らかくしたような出立ち。しかもまだ生きているのでうねうねしているのです。イソメがたくさん入った餌箱の地獄のような姿に、思わずシロギスの食卓事情を心配してしまいまいました。だってあれ蠱毒って調べたときに出てくる絵みたいなんだもん。しかし、私はあれに立ち向かっていかなければなりません。人間がカニカマではなくカニ、マーガリンではなくバターを求めるように、たとえお魚とはいえ人工物ではなく本物の餌が食べたいのです。仕方ありませんね。そんなイソメとにらめっこをしていると、あっという間に1時間ほど過ぎてしまいました。ここで船長から出発のアナウンス。これから待ち受ける試練に恐怖しつつ、それさえも楽しめそうなこの機会にわくわくしながら出航です。いざ釣り場!

あれ? ここって某テーマパークだっけ?

押し寄せる波が船底にぶつかり、船体が大きく揺れます。そうだこれ、インカ帝国みたいなとこを冒険するライドのやつだ! そんな戯言もたまにくるひときわ大きい波で浮き上がる体と共に消えていきます。よそを見ると、今回乗船している方々は歴戦の猛者ばかりなのでこの程度ではびくともしないご様子。ここまであまり話してはいませんでしたが、私実は電車ですらベロベロになってしまうほど、乗り物酔いがひどいタイプなのです。私がこれを閃いたとき、船での沖釣りでただ唯一気になっていた点はそれでした。ただ、そんな人間でもこのライドは非常に楽しむことができたのです。はねる波の飛沫も、スプラッシュな山を彷彿とさせます。思いがけない夢の国要素に驚きながら、酔いもほとんどと言っていいほど感じなかったことで、これは楽勝なのでは? と余裕ぶっていた私ですが、この姿でいられたのは残念なことにここまででした。

船長の巧みな操船術によって到着したのが、今回ターゲットとしている魚が多くいるとされる場所。通称”ポイント”です。船長が開始のアナウンスをしたことにより次々と投げ込まれる仕掛け達。私も慌てて練習通りエントリー。 

(キャプション)釣りをしている様子。竿がしなっています。

しかし船というものは実は止まっているときのほうが酔わせる揺れをするのです。夢の国行きってそういうことだったの? 虹のエフェクトがかかるのはパレードだけにしてほしい。そんな願いも虚しく酔いの感覚が体を駆け巡ります。しかし魚達は待ってくれません。自分が操っていた竿から伸びる糸が、予想もできない別の動きをし始めたのです。竿を握る手の先には、普段感じているようなスマホのバイブとも、ゲームコントローラーの振動ともまた違う不思議な感覚。まさに生命の躍動が伝わってきます。急いで糸を巻き取ります。しばらく魚相手に格闘していると、水面に影が見えました。まもなく顔を出したのはお目当てのシロギス! 船上に引き上げた後も力強く跳ねるその様に、少し感動を覚えました。自分で食べるものを自分で、しかもこの大自然を相手取り、実際に確保するのはなんとも言えない達成感がありました。シロギスはその名の通り全体的に白みがかった色をしています。釣った魚をまじまじと眺めると腹の部分の鱗は光を反射し、七色に輝いていました。これが釣りなのか。2投、3投と仕掛けをたらし次々と魚を釣っていきます。船の反対からも大きな歓声。やはりプロ達は止まることを知りません。みんなのアタリもそろそろ落ち着いてきた頃、船長からの合図でポイント変え。一度糸を巻き取り、数分船を走らせた後、再び釣りを開始します。しかし、必ずしもアタリがき続ける訳ではないのが釣りの常。しかもそれがアマチュアである私となれば尚更です。そんなときは、ぼーっと遠くの景色を眺めます。いくら東京湾とはいえ海は水平線の彼方まで広がっています。加えて工業用にコンテナやガスを積んだ大型船、私達と同じように釣りを行っている小型の漁船、はたまた横須賀から出たる軍艦など、実に多種多様な船が海上に浮かんでいます。あれほど人から離れたがっていた私ですが、海という広大な自然においては人の存在が安心する材料になっていました。海と陸。一見別々でも人が存在していれば各々の目的に各々が行動しているというところが共通しているのは面白く感じます。

その後もポツポツとアタリを繰り返し、15尾でフィニッシュ。今回の竿頭、つまり一番釣った人は50尾ほどということでしたので、釣りの奥深さはとてつもないなと思います。

(キャプション)釣った魚達と海の写真。酔っ払って横になっているのはご愛嬌。

(キャプション)シロギスといえば天ぷら! 自分が釣ったということもあり、流石においしすぎる。1日の疲れも吹っ飛びます。

いかがでしたでしょうか。早大生も、そうでない方々も、次の長期休暇に何をするかはもうお決まりですね? ディズニー? 渋谷でショッピング? バカ言っちゃいけません。あなたが持つべき物は熱々のチュロスでも、電車の手すりでもなく、釣り竿です。手元の光る板ではなく、魚の輝く鱗を眺め、自然と相対する達成感に酔いしれてみては。

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